INTERVIEWS私にとってIRとは 十人十色のコミュニケーションの実現

コミュニケーションストラテジーグループ

近藤 正哉Masaya Kondo
佐原 珠美Tamami Sahara

コミュニケーションストラテジーグループの仕事とは?

【近藤】まず長い部署名ですよね(笑)
お客さまにもなかなか正式名称を覚えていただけないのが難点ですが、その名の通り、企業様が伝えたい情報を整理し、投資家をはじめとするさまざまなステークホルダーに対して如何にして伝えていくべきか。そもそもの戦略立案から実際の伝達に至るプロセスを総合的にサポートしていくお仕事です。

といってもイメージがつきにくいと思うのですが、それもそのはずで、コミュニケーションの世界では必ずしも決まったやり方や解決の方程式があるわけではありません。100社あれば100通りの課題がありますから、それぞれの企業様が置かれている状況や市場特性、経営資源などを総合的に勘案して最適解を追究していく必要があります。

【佐原】具体的な例としてお話すると、現在主なビジネスとして取り組んでいることが二つあります。

ひとつはESG(環境・社会・ガバナンス)に関するコンサルティングです。これまでも多くの企業様がCSR(企業の社会的責任)の視点から、環境や社会に配慮した経営に取り組んできました。

ただ、今求められているのは、もう一歩進んだ、企業が存続し続けるための取り組みを伝えることなんです。つまり、長期的に業績を上げ続けるための戦略と、その戦略を実行するために必要な基盤や経営の仕組み、社会・環境との関係性など、企業の活動を総合的・包括的に伝えることが必要となってきているんです。

【近藤】これは、企業と投資家あるいは生活者との関わりが変化するなかで、歩み寄る対話姿勢が必要になってきていることが挙げられると思います。企業が一方的にものをつくり、大衆が追随していた古い時代の常識は通用しない。お客さまのニーズを起点に企業のイノベーションが生まれ、その理念やブランドに共感する消費者や投資家が企業を支援していく時代です。

そこで必要となってくるのがもうひとつのビジネス、企業ストーリーの構築を支援するコンサルティングです。さすがに最近では少なくなってきているものの、誰もがご存じの有名な企業様でも、決算短信や有価証券報告書、最低限の業績レポートといった適時開示のみという旧来型の義務的なIR活動や情報発信だけしていれば良いという「過去の常識」に縛られているケースはまだまだ多いんです。

機関投資家やアナリストはお仕事ですからそうしたデータがあれば判断はつくかもしれませんが、個人投資家となるとなかなか難しい。その企業がどういう考えに基づき、どういう戦略を取り、どこを目指しているのか。業績や計画だけでなく、そのバックグラウンドとなるストーリーをどうやって伝えるかを企業様に寄り添って考えていこうというものです。

業界の「常識」は世間の「非常識」?

【佐原】そんなの企業が考えるべきことでしょう?とよく言われるんですが、それを阻んでいるのがこれもまた「常識」なんです。

企業の担当者の皆さまはその道のプロフェッショナルですから、当然のことながら自社や業界のことに精通しておられます。ただしコミュニケーションの観点からするとそこが曲者で、知らない、わからない方に伝えるべきなのに、あまりに知りすぎているがために相手が「何がわからないのかがわからない」ケースが多々あります。他にも知らず知らずのうちに業界用語や専門用語を使ってしまったりとか・・・ 

【近藤】傍から見るとすごい技術やユニークなビジネスモデルだったりするんですが、ご本人たちにとっては当たり前のことであるが故にそこが見えなくなっていることはよくあります。

私たちが第三者視点を持って企業様に寄り添う意味はそこにあると思うんです。何がすごいのか、また何がわからないのかを整理し、相互のコミュニケーションギャップを埋めていく助けとなることがリレーションの本質だと思っています。

伝えたいことが相手に伝わるというのは本来すごく楽しく、嬉しいことですよね。企業様にとっても自分たちの姿がステークホルダーに正しく伝わることは本当に嬉しいことだと思います。企業様に本当に喜んでいただきたい。そんな想いで仕事に取り組んでいます。

【佐原】そのためにも、自分たちがいわゆる「常識」に踊らされないよう、心がけています。

世の中が目まぐるしく変わってコミュニケーションの質自体の変革が求められる時代に固定化された考えでは対応できませんし、企業様ごとに最適なソリューションとなるよう、私たち自身も担当コンサルタントや関係部門、協力会社など、社内外のあらゆる方々とも決して縦割りでなく、壁を取り払ったコミュニケーションを図っていくことが大事だと考えています。

【近藤】自分たちが「面白い」と思えないプランやシナリオを、お客さまが採用してくださることはありませんし、その先の投資家やステークホルダーの皆さまが面白がってくれることはありません。良い意味での「面白い仕事」という付加価値に拘っていきたいと思います。